実はわたし、結婚してます





あの頃の君をもう一度





う・・・。
なんだか・・・無残な格好です。わたし。
結局・・・してしまいました。最後まで。
玲斗ってばいつもよりもなんだか興奮気味で、しかも嬉しそうだし・・・そんな顔見てたらわたしだって感じずにはいられなくなります。
思いっきり乱れてしまいました、わたしも。ほんと玲斗にはかなわないんです。
上半身は制服を思いっきり捲し上げられてブラのホックだけが外され・・・・・・下のスカートはそのままでパンツだけ脱がされ・・・。どうすればいいのでしょう、この格好。

「千穂、その格好いやらしすぎる」

やった張本人がこんなこと言ってますよー!
足がガクガクして身動きの取れないわたしを玲斗が舐めるように見つめて、ニヤニヤしてます。
ほんと意地悪です。わたしが逆らえないのを知っていてそんな顔してるんですよ。
でもこういうところも好きなわたしはやっぱり変なんでしょうね。
はー。

「千穂、その制服捨てるなよ」
「え?」

もしかして、また・・・す、す、する気なんでしょうか。
いやー!絶対絶対捨ててやるんですから。

なんてまさかそんな怖いことできるはずもなく、わたしは玲斗の言うとおり制服をハンガーにかけ、クローゼットの中の玲斗コレクション―玲斗が買ってくれた洋服―のひとつに加えられます。

そしてふたりでシャワーを浴び、再びリビングへ。
見ると、片づけが思いっきり途中になってしまってます。
わたしが卒業アルバムを自分の部屋へもっていこうとすると、玲斗が何も言わずひょいっと奪い取るとさっさともっていってくれます。
こういうところ、優しいんですよね。

「ありがとう」
そういっても、玲斗からの返事はないんですけどね。

「そういえば、玲斗の卒業アルバムはないの?」
制服は処分しているにしても卒業アルバムくらいはありますよね。
「あー・・・あるとしたら本宅の方だな。たぶん。見たこともないが」
「見たことないの!?」
「当たり前だろ。なんでわざわざ過去の自分を見て浸らなきゃいけないんだよ」
「わたしだって玲斗のアルバム見てみたいんだけど」
「千穂には絶対見せない」
「えー!!」

やっぱり玲斗はずるいですよ。
自分だけ、わたしの過去の記録をしっかり目にして〜!
さっき襲われたソファで並んで座り、わたしは再び、送られてきた箱の中をごそごそと探り始めるのでした。
玲斗といえばやたらと機嫌がよくて、わたしが取り出す昔の品々をものめずらしそうに眺めていました。
お母さんてば、なんでこんな変なものばっかり入れてるんでしょうか。
昔趣味で友達とはまってたビーズアクセサリーまで入ってますよ。こんなのもう処分しちゃってかまわないんですけど〜。
なぜか小学校時代のお道具箱とかまで入ってるし。なにこれ、裁縫道具まで入ってますよ。今新しいのもってるんですけど・・・。
普通こんなのとっておくもんなのでしょうか。
てっきり捨てられているものとばかり・・・。
でも、やっぱり懐かしいですね。
あの頃のわたしは何も考えずよくけらけら笑っていましたよ。
こんな奇妙な人生を送ることになろうとも知らず・・・。

でも・・・やっぱり玲斗との生活は・・・幸せですから、これでいいんです。

少しでも長くこの生活が続きますように。わたしはそう願いなら玲斗の身体に寄りかかりました。

玲斗は何も言わずわたしの腰に手を回し・・・
そしてとんでもないことを口にしたのです。

「今度千穂の地元へ行こうか」

わたしは一瞬、何も考えられない状態になりました。
わたしの地元?実家ってことですか?玲斗が?

「千穂の両親に挨拶しないといけないよな」
「玲斗・・・大丈夫?」

玲斗ってば頭でも打ったんじゃないでしょうか。
玲斗がわたしの両親に挨拶!?ありえません!ありえません!
だって絶対家族にもこの結婚は秘密だって言ってた玲斗がですよ?しかも離婚するかもしれないこの関係をですよ?
なぜに玲斗がわざわざわたしの実家の両親に挨拶するんですか?

「千穂・・・お前・・・俺をなんだと思ってんだよ」
「え・・・?上司で夫?」
「・・・。千穂・・・お前バカだろ」

えーえーえー!何度も言われてますよ!バカですよ!わたしはバカですよー。
呆れた顔をする玲斗に向かって睨みつけると、全然怖くねー、なんて笑ってますよ。
まったく何を考えているんでしょうか。

「まあ、千穂の両親に反対されてもすでに結婚済みだからな」

玲斗ってば笑ってますよ。もう怖いもんなし、みたいな。
まさか、本気なはず、ありませんよね。
だって、わたしの両親に会って・・・玲斗にとっていいことなんて何一つないんですから・・・。

でも、わたしはこのとき気づいていなかったのです。
玲斗の視線が、旧姓のわたし宛て届いた荷物の『お届け先』をじっと見つめていたことに。
ここの住所は、会社でも旧姓を名乗っているために、わたしの旧姓でも届くようになっています。玲斗への郵便物はすべて実家のほうに届くようになっていて国府田さんがすべて管理しているため、わたしたちが同棲して、結婚生活を送っていることなど誰一人気づくことはありません。
玲斗はすべてにおいて徹底しているのです。
そんな徹底した秘密の結婚生活を希望している玲斗が、まさかわたしの両親に真実を話す日がくるなんて、本気で思ってはいなかったんです。



   








   



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