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「ねえ、学祭の間に何かあった?」
さすが絵梨サン。いつにもましてスルドイ。
「べ、べつに?」
「ふーん。ま、いいけどね」
「ホントに何もないって!」
「いいのよ、べつに。美月が妊娠して学校辞めてお嫁さんになろうがどうしようが」
「え!?はぁ!?絵梨ってば何いってんの!そ、そ、そんなことしてないってば!!」
「ものすごい動揺・・・っぷ」
「え、絵梨〜!!」
「ほっほっほ」

絵梨ってば、何を言い出すのかと思えば。
でも、そっか。先生は大人だし・・・大人だし・・・大人だし・・・。

「美月?ごめんごめん。ちょっとからかっただけだってば」
「うー」
「お父さんに会えたんでしょ?」
「うん・・・」
「良かったね」
「・・・・・うん」

良かった。本当に。
年に一度の大イベントの学園祭が終わり、学校は通常通りに戻った。嵐が去った後の片付けはそれはもう大変だったけれど、打ち上げ祭も凄く盛りあがったし、次の日はお休みだったので、こうやって登校してくると、あの賑やかさが嘘のようだ。
窓から見える景色は穏やかそのもの。
いつの間にか青々としていた木々も赤や黄色に色づいていて。
風が吹く度にちらちら散っていく葉は、もうすぐ冬の訪れを意味している。

なんだか短い間にいろんなことがありすぎて、自分の中でも整理しきれないくらいだ。

「そういえば2年の選択科目決めた?」
「うーんだいたい」

夏休み明けに渡された選択科目表。
冬休みまでにじっくり考えて提出するように言われている。
ロングホームルームを利用して科目説明会も行われるみたいだし。

年が明ければすぐだもんね。

「美月は地学とるんでしょ?やっぱり理数?」
「うん。文系はあたしには無理・・・」
「理数なんて男の巣窟じゃん。カレはヒヤヒヤなんじゃない?」
「まさか〜」

そのまさか、があたしたちをまた苦しめることになるのはもう少し先のことだった。
とにもかくにも無事2年生になれますように。
あたしたちが頑張るのは、とりあえず目の前にせまった期末試験なんだから。

「絵梨!待ってよ」
「美月がとろいんでしょ」

移動教室で、廊下の途中で天野先生と西尾先生が並んで歩いているのが見えた。
西尾先生、また普通科棟に遊びにきてるんだ・・・。
相変わらず暇な人だなぁ。
そう思っていると、西尾先生は笑顔であたしたちに手を振ってきた。
「こんにちはー」
あたしたちも笑顔で挨拶をする。
そして、天野先生をちらっと見る。
先生もあたしをちらっと見た。
目と目で合図。

「先生、大好き」

ちゃんと伝わってるのかな。
すれ違ったあと、あたしは後ろを振り返った。
同時に天野先生も振り返る。

ちゃんと、伝わってる。
以心伝心?
あたしは満足して再び前を向いた。
絵梨に軽くつつかれながら笑った。


春が来れば2年生・・・まだまだいろんなことがありそうです。








おわり











おつき合いいただきありがとうございましたm(_ _)m
ブログで載せてたものにちょこっと続きを付け足して、なんとか終わらせることができました。
随分昔に書いてたものなので、懐かしいな、と(笑)

美月と祥吾の恋人未満的な関係がけっこう好きだったりします。



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