ふたりのクリスマス〜玲斗〜






「千穂、今年のクリスマスイブは残業せずに早く家に帰れよ。」
「え?」
とりあえず俺は千穂にそう釘をさした。
「まさかどこか出かける気じゃないだろうな。」
「え、まさか。なんにも予定はないけど・・・ど、どうしたの?」
「別に。俺も早く帰るつもりだから。飯作って待っとけよ。」
「う、うん。」
千穂が動揺している・・・。
まさか誰かともう約束してるのか?
あの男の誘いを受けるつもりなのか?
千穂の周りをうろついてたのは元木だけだと思ってなのに、次から次へと男を引き寄せる女だな。


案の定、翌日・・・千穂はあの男からクリスマスの誘いを受けていた。
「で、千穂は当然断ってたんだろうな。」
「断っていらっしゃったようですよ。」
「ならいい。」
国府田からの報告を受け、俺は自分のデスクでメールチェックに戻る。
相変わらずくだらないメールが多い。返信すべきもの以外はさっさと削除していく。
「ぼっちゃま、立派なストーカーになれますね。」
国府田があきれたような顔をしているが、そんなこと知ったことではない。
「あいつがフラフラしてるのが悪いんだろ。」
「フラフラはしてないと思いますよ。」
その言葉に俺は自分の手を止めて、国府田のほうを向いた。
「国府田、今年のクリスマスは実家には帰らないからな。」
「・・・知りませんよ。ご自分でそうお伝えになったらよろしいのでは?」
それをしたくないからこうやって頼んでるのに、一体なんなんだ、この国府田の態度は。
「そろそろ千穂さんを紹介なさったらよろしいんじゃないですか?そうすれば毎年のように知らない女性のエスコートをしなくてもすむんですから。」
「やだ。」
「やだって・・・ぼっちゃま・・・そんな子どもみたいなこと。」
「国府田だってわかってんだろ。俺は千穂との時間を大事にしたいんだよ。」
「わかってますよ。ですがいつまでもこのままというわけにもいかないでしょう。別の守り方もお考えにならないと。」
国府田の言うとおりだった。
いつまでもこんな生活を続けていけるわけではない。
いつだって考えている。千穂を守るために、俺にできる最善の方法を。
クリスマス。
それがいい機会でもあることを俺はわかっていた。
順序どおりに事を運ばなかったために、今いろんなツケがきていることも。
「とにかく今年は行かない。女と過ごすと伝えといてくれ。」
「ぼっちゃま・・・。よろしいのですか?」
「ああ。」
しかし、そのことが逆に俺を実家へ顔を出さなければならない理由になったことは言うまでもない。

国府田は翌朝サラッと
「ぼっちゃまから直接、その辺のお話を詳しく聞きたいそうですよ。」
なんて言いやがって。
上手く言ってくれればいいものを。
結局クリスマス当日は実家へ寄ることになってしまった。
ちくしょう。なんのためにがんばって仕事をこなしてると思ってるんだ。
早く帰って千穂と過ごすためだろ。
わざわざ小石川家のくだらないパーティに顔を出すためじゃない。

















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