実はわたし、結婚してます〜Trick or Treat!〜







その日、玲斗は寄るところがあるからと、わたしひとりで会社を後にしました。
電車で帰ろうと思っていたけど、いつものように国府田さんが送ってくれました。
もうすぐ産休に入るので、こうやって迷惑をかけるのももう少しですね。ホント国府田さんの仕事を減らすために玲斗の秘書になってるのに、わたしってば余計国府田さんの仕事を増やしているような気がしてなりません。
それなのに国府田さんてば、「千穂さんのおかげで最近は早く帰れます。」だなんて笑顔でおっしゃってくれて・・・ホントどこの誰かと違って紳士そのものですよ!

自宅に着いて、食事の準備をしていると程なくして玲斗が帰ってきました。
玄関まで出迎えに行くと、玲斗の手にはなにやら大きな物体が。

「な、なにそれ・・・。」
「かぼちゃ。」
「へ・・・?」
「だから、パンプキンだろ。」
「・・・。」

そんなの見ればわかります。
イチイチ日本語と英語で言われなくてもですね・・・。

「千穂がハロウィンハロウィンつってうるさいから、用意させたんだよ。」
「・・・え?」

玲斗はそっけなくそう言うと、その大きな物体をダイニングテーブルにどかっと置くとさっさと自分の部屋に向かっていきました。

「うわー、ホントに大きい。」

実はこんなに大きなかぼちゃ、テレビで見るくらいで、実際に触ったことってないんですよね。
でもハロウィンだからってこんなかぼちゃをボン、と置かれても・・・一体どうするつもりなのでしょう。

着替えて戻ってきた玲斗におそるおそるたずねてみると・・・

「千穂・・・ハロウィンつったらかぼちゃのランタンだろ。バカか。」

バカ!またバカって言いましたよ、このダンナ様は!!
かぼちゃのランタンはわかりますよ。
だけどこれはどこからどう見ても何も施されていないただでかいだけのかぼちゃなんですよ!

「明日の休みは、ランタン作りだな。」
「え?れ、玲斗がつくるの?」
「当たり前だろ。千穂がやりたいなら手伝ってもいいけどな。」

なんなのでしょう。どこかわくわくしている玲斗を見ていると・・・なんだか不思議な気持ちになってしまいます。

「玲斗、作り方わかるの?」
「ほじくりかえして顔を掘るだけだろ。昔ニューヨークに住んでた頃、ホームパーティで作らされたことがある。」
「えー、そうなんだ。楽しそう・・・。」

そういえばそうでしたね。
玲斗はニューヨークに住んでいたことがあったようです。なんか修行のためとかなんとか言ってたような気がします。
そっか〜、玲斗って意外といろんな経験してるんですね。

でもかぼちゃのランタンって一度作ってみたかったので、なんだかわたしも嬉しい気持ちになってしまいました。





 














    



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