ある夏の夜のふたり






ある夏の夜のこと、千穂と玲斗はふたり並んで、テレビを見ていました。
そう、その番組とは・・・夏の夜にピッタリの怪談話。


「さて、そろそろ風呂でも入るか?」
「う、う、うん。」

どんなに恐ろしい怪談話を聞いても見ても、特に何も感じない玲斗は番組が終わると、なんでもなかったかのように千穂に話し掛けました。
しかし、千穂はなんだか様子が変です。
いつもならありえないことに玲斗の腕に千穂がしがみついているのですから。

「なにやってんの?」
「え?べ、別に?」
「もしかして怖い、とか?」
「そ、そ、そんなことないよ。」

明らかに挙動不審な千穂は、本当のところ怖くて怖くてたまりませんでした。
なぜに玲斗が、何も感じていないのか不思議でならないとともに、千穂はもう今夜寝れるのかどうか、という不安でいっぱいだったのです。
玲斗に引きずられるようにして浴室に連れて行かれた千穂は、やっぱり玲斗にくっついたまま離れません。
玲斗にとっては千穂からこんなに積極的に?スキンシップを求めてくるなど初めてのことだったので、妙に気持ちが嬉しくなってしまうのです。
ベッドの中だけでなく、こんな風に寄り添われるのは、悪い気分ではないですから。

湯船でくつろいでいると、カターン!と何やら物音がしました。
その瞬間。

「いやあああああああああ!!!」

ものすごい悲鳴が玲斗の耳を突き破るように飛び込んできたと同時に、千穂の柔らかい双方の膨らみが思いっきり玲斗の胸板に押しつけられたのです。
気づくと、千穂が玲斗の身体にピッタリと密着しています。
もちろんお風呂ですからふたりとも素っ裸です。

「ち、千穂?」
「いやいやいやいやいやー!」
「・・・なんか落ちただけだろ・・・。」
「いやだってばー!!!」

千穂のあまりの怯えように、玲斗は今までになく驚きと、幸せを感じてしまいました。
千穂が自分から抱きついてきたのです!
玲斗のSっ気がムクムクとわき出てくるではありませんか。

「千穂。」
「・・・。」
「このままここで抱かれるのとベッド、どっちがいい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・べ・・・ベッド?」
「了解。じゃあ、怖い夢なんて見る余裕なくなるくらい激しい夜にしてやるよ。」
「ハイ・・・?」

玲斗はそう言うと、我に返った千穂におかまいなく、千穂の身体を抱き上げ、そのままタオルを被ってベッドルームへと向かったのであります。
千穂のむなしい抵抗も玲斗にはまったく通じなかったようです。


そしてその夜。
ご想像どおり、千穂は何も考える余裕もないくらい玲斗にしっかり愛され・・・
いつの間にかぐっすりと眠ることができたのでした。


よかったのか、悪かったのか。
もう二度と怪談話なんて見ないと誓う千穂と、たまにはこんなこともいいな、と思う玲斗の夏の夜の出来事でした。



おしまい。






イヤン、玲斗ってば(笑)→








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