実はわたし、結婚してます〜番外編〜
バレンタインと初恋と…その裏で…
「ねえ玲斗、悠斗と千華がこんなのくれたんだけど」
寝室でやっと夫婦ふたりきりになれると、わたしは夕方千華から受け取ったものを玲斗に差し出します。
「へえ、あいつらも粋なことをしてくれる年頃になったなぁ」
我が自慢の息子と娘の意外なプレゼントに玲斗はすっかり上機嫌です。
「でも、いいのかなぁ、わたしたちだけで行っても」
「別にいいだろ。もう家に残してて危ないって年頃でもないし。飯だって悠斗が作れるんだし」
「それはそうだけど、なんだか申し訳ないなぁ」
「土産でも買って帰ればいいじゃん。どうせ、それ期待してんだろ」
「そっか、そうよね」
でも、きっと本当の理由は別にあるんですよね。千華に好きな男の子がいること知ったら、玲斗どうするんでしょう。それは怖くて言えないんですけど。玲斗と同じくらい千華を溺愛してる悠斗が傍にいるから余計心配なんですけど。あれこそまさに、千華が結婚するとか言い出したら大変なことになりそうですよ。――ええ、もう親子で千華の結婚妨害とかしそうで…ああ、今から心配です。
でも、こんなに玲斗が喜んでるし、素直に受け取るしかないんですよね。
ああ、こんな母を許して、千華。なんとか頑張ってね。
「ホテルでふたりきりか」
「?」
いきなりニヤリ、と笑った玲斗が覆いかぶさってきます。う、これは危険な状況ですよ。
「久々に千穂の喘ぎ声が聞ける」
「え、は!?」
「家じゃ、我慢してるだろ?」
「だ、だって…あ、あたりまえでしょ!」
何言い出すんですか、この旦那様はー!!しかも、この体勢。明日も仕事があるんですけどー!
「せっかくだから、楽しもうぜ」
「ちょ、玲斗……ん…」
唇を完全にふさがれ、もはや身動きが取れない状況に持ち込まれてしまいました。ここまでくると戻れないのです。お互いに。
変わらず夫婦で愛を交わし、重なり合える幸福に感謝して、わたしは瞳を閉じます。
もうすぐバレンタインデー。
結婚して、何度も経験してきているけれど、この日は変わらず愛の告白をします。
わたしから、大好きな男の子――わたしの愛する旦那様に。
愛してます、と。
END