実はわたし、結婚してます 育児奮闘記 ２ なんだか頭がぼーっとしています。 わたし、一体何をしているんでしょう？？ 「千穂？」 玲斗？ わたしは玲斗の声にハッと起き上がります。 「今何時？！」 「４時くらい」 「えーーーー！！なんで起こしてくれなかったの！夕飯の準備しなきゃ。あ、買い物も行ってないよっ。ああ、その前に授乳！」 「今日はどっか食いにいけばいいだろ。悠斗はまだ寝てる」 「えー、でも。この前も外食にしたし」 「千穂は毎日頑張りすぎなんだよ。もう少し楽することを覚えろよ」 「玲斗・・・」 それってわたしのこと必要ないってことでしょうか。そういうコトは全部ベビーシッターとかハウスキーパーさんに任せて、少しずつわたしを排除していこうとしてるんでしょうか。 やっぱり、玲斗にとってみたら後継ぎを産んだわたしのことなんて用なしなのかもしれないです。 夜だって、産後、1ヶ月以上たって、お医者さんからOK出たのに、求めてもらえないですし・・・って確かに性欲はあまりないんですけどね。 だけどやっぱりどこか淋しいのです。 「千穂？」 「ん？」 「どうかしたか」 「ううん」 本当のことは怖くて聞けません。 結局その日はまた外食になりました。玲斗が個室のあるレストランへ連れていってくれるので、赤ちゃん連れでも困ることはありませんが、なんだかいつも申し訳ない気持ちになってしまいます。 玲斗は、本当は自分専用のシェフでも雇いたいのかもしれません。 そうすればこうやって外に出なくてもいいですからね。 なんだか産後、楽しいことはたくさんあるけれど、悪いことばかり考えてしまうこともあって・・・こういうの産後鬱とか言うんでしょうか。 あ、産後鬱って子育てのことで鬱々しちゃうことですよね！ じゃあ、こういうのってなんていうんでしょう！でもでも、産後だし・・・なんてわたし、こんなこと考えてても堂々めぐりですよ！ 自分で自分に突っ込んでいると、玲斗がわたしの顔を覗き込みます。 「千穂、お前しっかり食えよ」 「え？」 「さっきから箸が止まってるぞ」 「あ、ごめん。なんかボーっとしてた」 「大丈夫か。明日悠斗をどこかに預けるか？」 「な、何でそんなこと言うの！大丈夫だよ！わたしは大丈夫！」 悠斗はわたしが育てるんです。絶対にベビーシッターになんか渡しませんよ！ ついついムキになってしまいます。 玲斗がわたしを心配してくれていることに全く気づくことができなかったのです。 その夜、しっかりお昼寝をしてしまったせいか、なかなか眠りにつくことができず、何度も何度も寝返りをうっていると、玲斗が抱きしめてきました。 どきり、として身体を硬直させていると、玲斗が耳元で囁いたのです。 「したい」 その声があまりにもセクシーで、わたしの身体は一気に女を取り戻したかのような感覚に襲われます。 「千穂、いいか？」 「うん・・・」 産後初めて誘われて嬉しい気持ちと、痛かったらどうしようという不安の両方が駆け巡ります。 けれど、きっとわたしは玲斗を拒むことはできません。 「千穂・・・」 どうしましょう。なんだか、ものすごく緊張します。 ほら、わたし、初めてのときってあれよあれよと言う間に玲斗に襲われて、ドキドキ感に浸ってる暇もなかったというか、気づいたら終わっていたので、もしかすると、初めてのときって普通ならこんな感じじゃないかと思うのですよ。 好きな人と迎える初めての夜って言うんですか？ いや、わたしはもう出産までしちゃってるんですけどね！ ああ、もうなんだかよくわかりません。 そんなこともうどうでもいいです。 玲斗のキスを受けながら・・・わたしの意識は玲斗だけに集中していくのです。 が！ 「玲斗！待って！」 「なんだよ」 「上は・・・ぬ、脱がせないで」 「なんで？」 「ぼ、母乳出そう・・・」 「ああ、そうか」 そうなんですよ。母乳パッドしてないと飛び出ちゃうんですよ〜。 「玲斗・・・」 じっと玲斗の顔を眺めてみました。 やっぱりかっこいいです。 そのときでした。 「ふ・・・ふぎゃ・・・んぎゃ・・・・・ぁぁぁああ」 夫婦のベッドの横に置いてあるベビーベッドから鳴き声が聞こえてきます！ その声で、わたしは一瞬で母親に戻ってしまいます。 「悠斗！」 玲斗を押しのけて、ベビーベッドの悠斗を抱き上げました。 「千穂・・・いてぇ」 「え、あっ・・・ごめん、ごめんね！！」 きゃー！悠斗のためとはいえ、玲斗を突き飛ばしてしまいましたよ！どうしましょう。絶対玲斗怒ってますよ！ああ、怒り奮闘間違いありません。 「ごごご、ごめんなさい」 わたしは悠斗を抱えたまま、玲斗に近寄りもう一度謝ります。 「は〜・・・コイツとすでにライバルな気がする」 「え？」 「絶対コイツわかっててやってるぞ」 「は？なにを？」 「千穂、覚悟しとけよ」 「ええ？」 玲斗ってばイキナリ何を言い出すのでしょう。 意味がさっぱりわかりませんよ。 育児奮闘記END ←　　　→ お決まりの・・・（笑）