実はわたし、結婚してます 〜ふたりの距離〜
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「どういうこと?」
「だからそういうことだ。なにか問題なのか?」
「だって・・・わたしのことなのに。どうして」
「これで千穂は働かなくてもいいだろ」
「・・・な・・・働いて玲斗に全額お返しします!」
「別にいいよ。たいした額じゃないし」
「た、たいした額だよ!そんなことしてもらうわけにはいかないもん。玲斗には関係のないことでしょ!」
「将来は俺の会社だろ。会社の問題を片付けただけだ」
「違うよ!!」
玲斗が帰宅してから、事実を問いただすと、玲斗はわたしの借金を肩代わりし、全額一活返済をしてくれたらしいです。
住まいを与えてもらってるだけでありがたいことなのに、そんなことまでしてもらう義理なんてありません。
これ以上の迷惑をかけるわけにはいきません。
どうせ出て行こうとしていたのです。
問題はありません。
「わたし、出て行くよ。ちゃんと働いて全額返すから・・・。今までありがとうございました」
「は?何言ってんだよ」
「だってもう、借金はないから今度はもう少しちゃんとしたところ探せるし、玲斗には何年かかるかわからないけど、ちゃんとお金は返すから」
「返す必要なんてないだろ。俺が勝手にやったんだから」
「ダメ!玲斗は家族でもないし、わたしと繋がりなんてないもの!」
「・・・。じゃあ結婚すればいいだろ」
「な、なに言って・・・」
「千穂だってあんなにキスだけで感じてたんだから、身体の相性だってバッチリだろうな。なんならこれから試してみる?」
そんな玲斗の発言に思わず紅くなります。
キスで感じてしまったのは不覚にも事実です。
でもでも、キスなんて初めてなんですから仕方ありません!!
「あ、愛のないセックスはいやだもん!」
「愛のあるセックスすればいいだけだろ」
そんなことできるわけありません!
たとえわたしが玲斗を愛しても、玲斗がわたしを愛することなんてありえませんから!
それに結婚って一体この人はなにを考えているんでしょうか!
確かに結婚して夫婦になれば財産は・・・
って、そんなありえない話しても仕方がありません!
愛のない結婚なんてそれこそできません。
そう思っていたのですが。
「や・・・ん・・・」
「千穂・・・」
わたしはどうしてバージンまでを玲斗に捧げるはめになってしまったのでしょうか。
玲斗のベッドの上で、素っ裸にされ、玲斗の腕の中で考えます。
けれど、初めて、の体験は思っていたよりも痛くはありませんでした。それは思っていたよりもずっとずっと玲斗が優しくしてくれたからです。
不覚にも愛情があるように錯覚をおこしてしまうくらい、玲斗はゆっくりと優しく、抱いてくれたのです。
ファースト・キスも初めてのセックスも愛する人ではありませんでした。愛情もありませんでした。
けれど、心の中は満たされた思いでいっぱいだったのです。
身体を重ね合わせるってすごく気持ちのいいことなのかもしれません。
とてもとても安心できることなのかもしれません。
「やっぱり相性バッチリだったな」
「え?」
そう、わたしが出て行く出て行く、って喚いていたら、玲斗に唇をふさがれ・・・
気がつけばベッドに運ばれていて、
キスだけで朦朧としていたわたしに玲斗は囁いたのです。
「もうここまできたら覚悟決めろよ」
玲斗のキスで身体の奥底からなにか熱いものがあふれ出すのを感じていたわたしは、そのまま玲斗に身体を委ねてしまったのです。
玲斗の触れる指先に、身体中をすべる唇に、いちいちわたしは反応してしまい、そして感じてしまったのです。
心の中では、ダメだと思っているのに、身体はもう玲斗の言いなりでした。
玲斗を受け入れたくて受け入れたくて、
身体中で玲斗を求めてしまったのです。
こんな気持ちになったのは生まれて初めてのことでした。
そしてわたしがこんなにイヤらしい女だったなんて初めて気づかされました。
「痛かったか?」
「ん・・大丈夫。でもなんかまだ・・・」
異物感が。
それに身体がずどーんと重たい感じです。
「これから毎晩やればすぐに慣れるだろ」
「え・・・?」
毎晩?
な、なにをやるというのでしょうか?
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