実はわたし、結婚してます





本日は晴天なり





「千穂・・・。いつから腹部エコーになるんだよ」
「へ?さ、さぁ〜。わたしだって初めてだしわかんないよ」

病院からの帰り道、途中役所に寄って、母子手帳ももらってきました。
自宅マンションへと向かう道を歩きながら、玲斗が聞いてきました。

「じゃあ、帰ってからネットで調べるか」
「う、うん・・・」

もしかして・・・玲斗・・・エコーで赤ちゃんが動いてるところが見たいんでしょうか!?
まさか、玲斗が!?
なんだかどうでもよさそうに見えるんですけど・・・玲斗も気になるんでしょうかねぇ。

「でも、母子手帳ってなんだか恥ずかしいね。前にお母さんに、自分の母子手帳見せてもらったことあるけど、まさかわたしがこうやって自分の子どもの母子手帳をもらうなんて思いもしてなかったよ」
「嬉しくないのか?」
「え、嬉しいよ?ちゃんと書かなきゃなぁって。ほらわたしって次女だから、お母さんてば、手抜き記入だったんだよ」
「ふーん。そういえば俺も真っ白だったな」
「え、そうなの?」
「ああ、俺の母親はそういう細かいことはしないから」

わお!
玲斗のそんな話初めてですよ!
玲斗は過去の話、あまりしませんからね。子どもの頃のことなんて全部「忘れた。」「覚えてない。」で終了です。なので、それ以上何も聞くこともなく、話が盛り上がることもなく会話は終わってしまうのです。
玲斗の母子手帳・・・ちょっと見てみたいって思うのはわたしだけでしょうか。
何も書かれていないといっても、生まれた日時とか、出生体重は記入されてるはずです。

「玲斗のお母さんって仕事してるんだよね?今も海外にいるの?」
「ああ。行ったり帰ってきたり・・・」
「たまには会うの?」
「ほとんど会わない」

もし玲斗のお母さんが知ったらどんな顔するんでしょう。ってわたし玲斗のお母さんなんて見たこともないし、話に聞くこともほとんどないんです。
両親ともどもお仕事をされていて、海外と日本を行ったりきたり、という話をちらっと聞いただけですからね。
わたしの存在を知ったらさぞかしお怒りになるんでしょうね・・・きっと。
そして子どもまで身篭ってしまって・・・。

「千穂、今日はつわりは平気なのか」
「うん。朝と夕方だけ、気持ち悪くなる感じ」
「ふーん。じゃあまた今夜は何か食べれそうなものだけ買って帰るか」
「うん。デパ地下寄って帰ろうよ」
「千穂・・・オマエ、匂い大丈夫なのかよ。今朝、ご飯の匂いでぎゃーぎゃー喚いてたくせに」
「だから、それは朝だったからなんだってば!」
「今買って、夜食えるのか?」
「・・・さぁ?」
「千穂って・・・バカだよな」
「・・・」

またバカって言ってますよ。このダンナ様は!
だけど、こんな風に玲斗と会話しながら歩けるだけでもわたしは幸せを感じてしまいます。

雲ひとつない青い空が、まるでわたしたちの赤ちゃんを祝福してくれるかのように思えたのは、わたしの気のせいでしょうか。






本日は晴天なり END


   









   



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