実はわたし、結婚してます





本日は晴天なり





えー、本日、わたしたち夫婦がどこにいるかわかりますでしょうか。
そうです。
病院にいます。
病気とは縁のなさそうなわたしと玲斗ですが、こんな有名な病院の産婦人科へと足を運ぶことになったのはもちろん、妊婦検診を受けるためですよ!
恥ずかしいから、来なくてもいいのに、しっかり玲斗もついてきています。
確かに今日は休日ですから、夫婦で来ている人たちもパラパラといらっしゃいますが、産婦人科に来るというだけでも、わたしはドキドキなのに・・・玲斗ってばいつもと変わらない表情です。
はっ。
もしや、玲斗ってばこういうの経験済みだったりするんでしょうか!
孕ませたおなごを連れてこういうところへきて・・・そう考えると隠し子とかでてきそうですよ!

そんな妄想を膨らませていると、「小石川千穂さん」なんて名前が呼ばれてしまいます。
当然のように玲斗が真っ先に立ち上がりましたよ!
呼ばれたのはわたしですってば!あなたじゃございませんっ。なんて心の中で叫びますが、玲斗に聞こえるはずもなく、わたしはおとなしく玲斗の後をついていきます。

「千穂、転ぶなよ」
「大丈夫だよっ」

もう、この間からなんなんでしょうね!なぜにわたしがこんなに子ども扱いされなければならないんでしょうか!
いくら鈍くさいわたしだって妊娠してるとわかれば気をつけますよ。

診察室に入ると、そこには笑顔の素敵な女医さんです。
なんだかとても優しそうですよ〜!よかったです。やっぱりなんていうか、気分的にも女医さんの方が安心できるというか・・・だって恥ずかしいじゃないですか!
わたしはすぐに内診室に入るように言われ、隣の内診室にうつります。
玲斗は待機ですが、なんとなくご不満の様子。
だいたい内診なんて・・・あまりにも恥ずかしい格好させられるのに、玲斗なんかに見せられませんよ!
わたしは下着を脱いで、内診台に座ります。
あー、初めてです。
初体験の内診台。話には聞いていましたけど、本当に大股開くんですね、これ。

「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。上のモニターに赤ちゃんが写るからようく見ててね」
で、ふと女医さんの声に上を見上げると・・・そこにはモニターがあるではありませんか。

「イタっ」

一瞬の痛みを感じ、再びモニターを見ると、そこには微かに動いている小さな小さな豆粒があります!
もしかして、もしかしなくてもこれが・・・

「赤ちゃんですよ。心音も聞こえてるし、正常妊娠ですね。週数的に見ても順調に成長してますよ」

「そ、そうですか・・・」

なんだか感動です。
本当に、本当に、ここにいるんですね・・・。
凄いですよ〜!
本当はもっと眺めていたい気分でしたが、あっという間に終わってしまいました。
再び診察室に戻ると、玲斗がさっきよりも不機嫌そうに迎えてくれます。
な、なぜ!?
一体玲斗の身に何があったのでしょうか。

女医さんから、妊娠初期の注意事項を聞き、そして今後の妊婦健診や血液検査の予定などの説明を受けて、最後に・・・
なんとエコー写真をいただきました!
うわーうわー、これがエコー写真というものですね。

「玲斗!見てみて」

思わず、玲斗の目の前にもっていくと、玲斗の表情が少しだけ緩むのがわかりました。
やっぱり玲斗も嬉しかったりするんでしょかね。
ほら、男の人って自分の身におこるわけじゃないから、イマイチ実感がわかないとか言いますよね。

「・・・」

玲斗が無言でエコー写真を見つめているので、女医さんが微笑みながら口を開きました。

「腹部エコーに変わったら、ご主人も一緒に動いているのが見えますからね。もう少し写真で我慢してくださいね」

玲斗は無表情で頷いています。
なんなんでしょう、このものすごい違和感!
玲斗と一緒に産婦人科にきているという、この信じられない状況と、玲斗が自分の子どものことで女医さんの説明を真面目に聞いているという・・・あまりにも玲斗のイメージとはかけ離れた、この光景に、わたしはただただ現実とは思えない世界を感じてしまうのでした。




   









   



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