春うらら 〜お花見〜







「フラワーセンター!」
あたしは思わず声を高くしてしまった。
確かに春といえば花。花といえばフラワーセンターかもしれない。
でもまさか、春樹さんにこんな場所へ連れてきてもらえるとは思わなかったあたしは素直に驚いた。
なにげにいろいろ考えてくれてるんだなぁって思ってしまう。

「今、チューリップとかスイートピーとか見頃らしいよ。」
「そうですよね〜!」
「柚葉ちゃんも花は好きなんだね。」
「そりゃーそうですよ。花が嫌いって人の方が少ないと思いますよ?」
「確かにね。」

あたしたちは当然のように手を繋いで、綺麗に手入れをされ、美しく咲き誇る花を見てまわり・・・最後にショップに入って、ポット入りの花を幾つか買って、バルコニーに置こうということになった。
春樹さんはなぜかイチゴの苗を買いたがり、別に反対する理由もなかったので、「いいんじゃないですか〜?」なんて言うと、子どものように大喜びをしていた。
そう。

社長のこういう意外な姿は、何度も見ているんだけど。。。

さて、作戦はどう開始しようかな。
ご機嫌で購入して戻ってきた春樹さんと、あたしは一旦駐車場に戻ってくる。

「柚葉ちゃん、ちょっと遅くなったけどお昼はどうしようか。ここレストランもあるみたいだけど。もっと落ち着いたところがいい?」
「・・・。」

言うか?ここで言ってみるか?

「柚葉ちゃん?」

「あのっ、春樹さん・・・お願いがあるんです。」
「え、なに?」
「早く・・・家に帰りたい、です。」
「どうかした?気分でも悪い?」

ありえない!
絶対ありえないけど!ここまできたんだから、やりとげるのよ、柚葉!
あたしは心の中で覚悟を決めた。

「春樹さんと・・・早く・・・ふたりきりに・・・なりたい。。。」

ぎゃー!!!
言っちゃった!
絶対絶対こんなセリフあたしには言えないと思ってたのに!!

「え・・・柚葉ちゃん・・・?」

うつむき加減で恥ずかしさでいっぱいになって、さらにはやっぱり言ったことを猛烈に後悔しているあたしは春樹さんの顔が見れなかった。
やだ。
これじゃあ春樹さんが狼狽えてる顔なんて拝めない。
実際、春樹さんがどこまで動揺していたのかはわからない。
まさかあたしの口からこんな言葉がいきなり出てくるなんて思わなかっただろうから、春樹さんもしばらくは黙り込んでいた。

あまりに沈黙が長かったので、あたしはちらっと春樹さんを見上げた。
春樹さんはふっと、笑みを浮かべると、駐車場のこの公衆の面前であたしを抱きしめた。

「柚葉ちゃんのお望みはすぐに叶えてあげるよ?」
「え?」
「今日はお泊まりの予定だからね。」
「は?え?」
「柚葉ちゃんが誘ったんだからね?覚悟はできてるんだよね?」
「さそっ・・・て・・え!?」

あたしは意味が分からず、春樹さんの腕の中で、もぞもぞともがいた。
ていうか、誘ってなんかいないんだけど!
あたしではありえない、ちょっと可愛い言葉を言ってみて春樹さんが狼狽える顔を見たかっただけなんだけど!

「本当ならここで押し倒したいところだけど、ちょっとだけガマンガマン。」
「あの・・・?」

あたしを助手席に押し込む春樹さんはかなりご機嫌だった。

「まさか、柚葉ちゃんからふたりきりになりたいなんて言われると思わなかったよ。」
「いや・・あの!わー、忘れてください!」
ぎゃー!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!
もー穴があったら入りたい!

「忘れるわけないよ?僕をこんなにその気にさせたんだから、今夜は寝かせないからね。」

えーーーーーーーーー!!!
あたしってばもしかして、とんでもないことをしてしまったんじゃ・・・。


そう思ったときには既に時遅し。
車は春樹さんが予約したという宿へ向かって快走していたのだった。
ああ、あたしの運命やいかに。











やっぱり春樹さんには敵いません。・・・・・おまけ?







      


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